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初恋 7

Author: 煉彩
last update publish date: 2026-01-09 22:31:44

 ニコニコと笑って話す、川口さん。

 恐怖からか吐きそうになる。

 この人はもう異常だ。

「どこの公園に行くんですか?」

 恐る恐る聞いてみる。

 この会話を聞いて、誰か助けに来てほしい。

「木洩れ日公園だよ、僕たちの思い出の場所だろ?」

 話が全く理解できない。

 私は川口さんとその公園には行ったことがない。

 公園までは歩いて五分くらいかかる。

 その間に逃げ出せる隙を見つけなくちゃ。

「もし途中で逃げだそうとしたら、わかってるよね!?僕を裏切ったって判断するから、何をするかわからないよ」

 立ち上がった私のリュックを思いっきり掴み、人に見えない位置でナイフらしきものを突きつけられる。

 私は逃げ出せる隙を考えながら、川口さんの指示に従い、一緒に歩き出した。

 川口さんと一緒に歩く。

 こんな時に限って、人通りが少ない。

 川口さんが言っていた目的地の公園に着いた。

 昼間は人で賑わっているはずの公園も、夜は静かだ。

 ほとんど誰もいない。

 時折、電気をつけながらランニングをしている人がいるくらい。

 公園の端、さらに外灯がなく、人が来ないようなところへ連れて行かれる。

 ベンチに座らされた。

「東条ちゃんは、僕のことをどう思っている?」

 どうもこうも、お客さんとしか思っていない。

 それをどう伝えようか悩む。

「大切なお客様だと思っています」

 逆上しないようにあえて大切をつけてみたけど。

「もう、恥ずかしがらずに言っていいんだよ。僕のことが好きなんだって」

 はぁ。どんな勘違いをしているの?

「なぜ、そう思うんですか?」

「だって僕がコーヒーをこぼした時、あんなに親身になってくれたでしょ?ズボンだって嫌がらず拭いてくれたし、火傷はしてないかって腕も見てくれた。あんなに優しくしてくれるのって、僕のことを好きだからだよね」

 それは従業員として当たり前のことをしたまでだ。店長からの指示で対応したところもある。

 しかし反論をして、逆上をしたらと考えると何も言えない。

「あと東条ちゃん、僕だけに距離が近いよね。触って欲しいのかと思って、たまに触ってたんだよ。他の人に見られたらって考えるとゾクゾクしてすごく興奮したよ」

 気持ち悪い。

 やっぱり故意に触れられてたんだ。

 距離を近くした覚えはない。川口さんの妄想の世界になっている。

「僕さ、一回離婚をしているんだ。子どもがいた。会ってないからわからないけど、大きくなっていたら東条ちゃんくらいの女の子なんだ」

「そうなんですね」

 思わず感情がこもっていないような声で、冷たくあしらってしまった。

 離婚か、円満に別れてないからお子さんにも会えてないのかな。

 しかし、彼は気にしない様子で

「だから、余計に興奮したよ。東条ちゃんと付き合うってことは、あんなことやこんなことができるわけでしょ?娘と同じ年齢の子、若い女の子とそんなことするなんて考えたら、毎日が楽しかった」

 この人は、おかしい。

 常軌を逸している。

「もう、我慢できないよ」

 そう言うと、ベンチに座っている距離がさらに近くなった。

「嫌!」

 私は抵抗をしてしまった。

 殴られるだろうか、身体を小さくする。怖い。

「そうだよね、嫌だよね。こんなところじゃ」

 わかってくれたの?

 少しほっとするも彼はまた違う行動に出た。

「こんなベンチの上は嫌だよね。誰かに見られたら恥ずかしいし。でもね、僕はもう我慢できないんだ」

 リュックを掴まれ、さらに生い茂っている草むらへと連れて行かれる。

 そして、思いっきり突き飛ばされた。

「キャァ!」

 雑草の上に、転倒する。

 うつ伏せの状態から立ち上がろうとした。

 しかし、川口さんがうしろから押さえつけてくる。私の上に覆いかぶさってきた。

「嫌、離してください!」

 大きな声を出した。

「おい、声を出したらわかっているよな?」

 うつ伏せ状態から、身動きが取れない。

 川口さんの息が聞こえる距離、気持ちが悪い。

 今度は、強引に仰向けにされた。

「いい子にしていたら、痛いことしないからね」

 そういうと彼は、私の服のボタンを強引にひっぱり、服を破く。

 私の下着が露になった。

「東条ちゃん、可愛いね。さっき、僕が持っているもの、ナイフだと思ったでしょ?あれ、オモチャだから。本物じゃないよ。だから安心して。僕が好きな子を傷つけることなんてするわけがないじゃん」

 彼は笑っている。

 え、あれ。本物じゃなかったの?てっきりあの状況であんなことを言われたら、本物だと錯覚しちゃった。だったら、今すぐ逃げなきゃ。上にいる川口さんを退かそうとするも、まだ震えていて身体が言うことを聞かない。

 お願い、誰か助けて!?涙が出てくる。

 強引にキスをされそうになった。

 その時ーー。

「やめろ!」

 聞き覚えのある声がした。

 その刹那、彼が弾き飛ばされ、彼はゴロンと草むらに転がって

「痛い」と呟いた。

「警察を呼びました。もう抵抗はしない方がいい」

 低くて、聞きやすい声。

 髪の毛が少し長くて、顔は暗闇ではっきり見えなけどーー。

 黒崎さんだ。

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